宇宙人の真理
Original2022年10月
宇宙のどこかに知的生命体がいたとしても、私たちと共通する真理がいくつかあるはずです。数学の真理は同じであり、それらは定義上真なのです。同様に、物理学の真理も同じで、炭素原子の質量は彼らの惑星でも同じです。しかし、数学や物理学の真理以外にも、私たちと宇宙人が共有する真理があると思います。それらについて考えてみるのは意義があるでしょう。
例えば、ある仮説を検証する管理された実験結果に応じて、その仮説への信頼が適切に増えるという原則は、私たちと宇宙人で共有されるはずです。また、何かを練習することで上達できるという事実も、おそらく共通していると考えられます。オッカムの剃刀も同様でしょう。これらの考え方には、特に人間的なものはないように思えます。
もちろん、私たちにはそれ以外の知的生命体の姿を想像することはできません。そしてそれを探求することが、ここでの目的ではありません。宇宙人の真理という考えの目的は、数学や物理学の真理以外の、最も一般的な真理を見出すことにあります。つまり、知的生命体であれば共有するであろう真理を見つけ出すことです。
宇宙人の真理を探求する際は、寛容な立場をとるのが賢明でしょう。ある考えが宇宙人にも関連する可能性があれば、それで十分です。正義の概念など、全ての知的生命体が理解するとは限りませんが、それを否定することもできません。
宇宙人の真理という考えは、エルデシュの「神の書」という考えと関連しています。彼は、特に優れた証明を「神の書」にあるものと表現しました。それは、(a)十分に優れた証明は発見されたものであって発明されたものではなく、(b)その優れさは普遍的に認められるということを意味しています。宇宙人の真理というものがあるとすれば、数学以外にも「神の書」には記されているものがあるということになります。
宇宙人の真理を探求することを、何と呼ぶべきでしょうか。最も適切なのは「哲学」でしょう。哲学には、少なくともこの探求が含まれるべきです。アリストテレスもそう考えていたはずです。さらに、宇宙人の真理を探求することが、哲学の正確な記述ではなくとも、哲学の良い定義になるかもしれません。つまり、哲学者と呼ばれる人々が現在行っているかどうかにかかわらず、それが彼らがすべきことだということです。ただし、それにこだわる必要はありません。大切なのは実践することであって、何と呼ぶかではありません。
いつかは、AIの形で宇宙人のような存在が私たちの間に現れるかもしれません。そうなれば、知的生命体が必ず共有するであろう真理について、より正確に述べることができるかもしれません。例えば、オッカムの剃刀を使わない知的生命体を創造することは不可能かもしれません。そしてそれを証明することさえできるかもしれません。しかし、そのような研究は非常に興味深いものの、ここでの目的とは異なります。哲学の目的は、宇宙人の真理を目標として考え出したアイデアを見出すことであって、その閾値を正確に定義することではありません。これら2つの問題は、いつかは収束するかもしれませんが、それまでは、確実に宇宙人の真理であると言えるものだけに制限されるのは適切ではありません。特に、最良の推測が最適に近いことが多いこの分野においては、なおさらです。
何と呼ぼうと、宇宙人の真理を発見しようとする試みは、価値のある取り組みです。そして、それ自体が宇宙人の真理かもしれないのは、興味深いことです。
Trevor Blackwell、Greg Brockman、Patrick Collison、Robert Morris、Michael Nielsenの各氏に、この原稿の草稿を読んでいただいたことに感謝します。